「Q.S.C」を実現するための前提条件「3S主義」

「3S主義」との出会い

マクドナルド創業者レイ・クロックが提唱した顧客満足の概念「Q.S.C」を、 林俊範先生から教えてもらった僕は、自分の整骨院にも導入したいと思った。

QSCを現場で実現するためには、具体的な行動をマニュアル化しなければいけない。しかし、今のままでは複雑すぎてマニュアル化は難しい。どうすればいいのか悩んだ。

そんな時、林先生がヒントをくれた。ホワイトボードに書かれた3つの指標。「標準化」「単純化」「専門化」だった。それは、チェーンオペレーションの原則とも言われている「3S主義」だった。

3Sは、「標準化」「単純化」「専門化」の略。まずこの指標で、現場のオペレーションを整えることが必要だと知った。

「標準化」は、誰が行なっても同じ結果が得られること。そのためには業務を「単純化」して、無駄をそぎ落としことが重要で、結果として高品質な専門特化で競合差別化が図れるとのこと。

マクドナルド兄弟が個人レストランをマクドナルドというファストフード店に変革したのも、この三つの指標だと知った。

スモールビジネスの落とし穴

「3S主義」を知った時、僕は整骨院開業時から全く逆のことをやり続けていたことに気づいた。それが「属人化」「複雑化」「人類初」だ。

属人化とは特定の人にしかできないことを言う。自分にしかできない「複雑化」された職人技を駆使して、誰も見たこともない「人類初」のサービスで差別化を図ろうと考えていた。3S主義とは全く逆であり、仕事を権限移譲できない大きな要因だった。

カリスマを目指したり、職人型の一人親方として事業をやっていくなら属人的でいい。しかし、他の人とのチームワークでQSCを実現するためには、3S主義にしなければいけない。これはスモールビジネスの落とし穴ではないかと思った。

一般的なスモールビジネスの問題点は、サービスのムラと一貫性がないことにある。オーナー経営者は自分以外に仕事を任せることができずに行き詰って行く。

経営者自身が元気なうちはいいが、病気や怪我で体調崩した時、誰も任せられない時には店をしなければ閉めなければいけない。同業者にもそんな人を多く見てきた。もし仕事を他人に任せるなら、職人的思考から3S主義への転換が、QSC導入には不可欠となるのだ。開業6年目にして気づいた。

マクドナルド兄弟の変革を参考にする

では、複雑化してしまった現場の業務を、どうやって3S主義にすればいいのか? やはりマクドナルド兄弟の例が参考になる。

兄弟は営んでいたレストランが苦境に陥り変革を実行した。 まず過去3年の売上を分析し、25種類あったメニューを9種類に絞った。最も売れていたハンバーガーやフライドポテトの製造に集中するために厨房を改良。二人が料理するのではなく、分業体制にした。

さらに客席までの配膳をやめて、素早く商品を提供できるに店に変革した。結果として、行列のできる大繁盛店となり、売上は40%増えて。出店コストや人件費は1/3で抑えられた。ローコストで収益性の高いファストフード(Fast:早く提供する)の原型を作り上げた。

マクドナルド兄弟がやったことをまとめると次の六つになった。

■個人レストランを経営

■過去3年の売上を分析

■メニュー25種を9種に

■厨房設備を改良

■職人技を分業体制に

■テイクアウトのファストフードに変革(60秒以内)

3S主義による 気づきと反省

林先生から3S主義を教えてもらい。スモールビジネスの落とし穴と、 向かうべき変革の方向性が見えて来た。

<スモールビジネスの落とし穴>

職人技→メニュー増→複雑オペレーション→生産性低下→収益悪化

<スモールビジネスの変革>

メニュー絞る→単純化→マニュアル化→標準化→生産性向上→高収益

これまで、落とし穴に気付かないままいくら努力を積み重ねても、打開策が見えなかった。悩んでもがくほど、業務は複雑化してマニュアル化は遠のいた。でも3S主義知ったことで光が見えてきた気がした。

マクドナルド兄弟の行なったような変革を、自分の整骨院にも当てはめてみようと思った。

 中園 徹