レイ・クロックはなぜ成功できたのか

行列のできる大繁盛店を作ったマクドナルド兄弟は結局、店を増やすことはできませんでした。飲食のプロたちもマネをしましたが成功はできなかったのです。唯一飲食業では素人のレイ・クロックだけが繁盛店の多店化に成功しました。クロックはなぜ成功できたのでしょうか?

クロックは天性の才能で、兄弟の店が成功した要因を見抜いていました。その要因とは、低価格で質の高い商品を、スピーディかつ効率的に、清潔で居心地のよい空間で提供することだと捉えたのです。

もちろん、他にも同じように成功要因を見抜いた人もいました。ただ、それを再現する手段を持たなかったのです。

日本でも行列のできる店を作るセンスある経営者は少なくありません。当然、何がお客様を満足させるかもわかっています。しかし、それを従業員に確実に伝えることができる経営者は少ないのです。

なぜなら、多くの経営者がお客様満足を心がけで教えるからです。「品質を高めよう!」「スピーディに提供しよう!」「いつも店をきれいにしよう!」等々。自分では理解できていても、スタッフにうまく伝えられず壁にぶつかるのです。

レイ・クロックは兄弟の店を見て大きな成功を確信しました。兄弟の多店化がうまくいっていないことを見て、52歳の時に自らが店舗展開するためにマクドナルドのフランチャイズ権を獲得したのです。

クロックがマクドナルドを展開するに当たって重要なことは兄弟の店と同じく行列のできる繁盛店をモデル店として再現することでした。

そして兄弟の店を誰でも再現できるように成功要因を公式化しました。その公式が「Q.S.C」です。Qは「品質(QUALITY)」Sは「サービス(SERVICE)」、Cは「清潔さ(CLEANLINESS)」の略です。これらの3つが揃って、初めてお客は「価値(value)を感じるという考え方です。

彼はこの「Q.S.C」をマニュアル化して、現場が完全実行するよう訓練し浸透させたのです。そして全店を「Q.S.C」の項目ごとに評価する仕組みを構築しました。この経営システムにより全店統一の顧客満足を提供することが可能となったのです。クロックは、この「Q.S.C」に生涯こだわり続けました。

レイ・クロックが成功した最も大きな理由は、顧客満足を公式化し現場に落とし込むしくみを作ったことなのです。

「マクドナルドが成功した理由は、低価格でバリューの高い商品をスピーディかつ効率的に、清潔で居心地のよい空間で提供することだ」 レイ・クロック

中園 徹