オランダと日本の働き方の違い② 働き方の実際

ワークシェアリングのモデルであるオランダには、パートタイマーとフルタイムの正社員に待遇格差はほとんどない。

正社員のフルタイマーであっても、自分の労働時間は自由に選べるようだ。今の日本でも、正社員が自分で労働時間の増減を自由にできれば、活躍できる女性やシニアも増えるだろう。

では、オランダにおける労働時間の増減は、実際どのように行なわれているのだろうか。前回と同じく、人材派遣会社アデコ(オランダ・グローニンゲン)のイエッセ・プリンス氏(Jesse Prins)に聞いてみた。

労働時間のシフト管理はどうやっているのですか。シフト表のようなものを使うのでしょうか?

「私のオフィスでは、シフト表というものはありません。働く時間は毎日変更が可能です。たとえば1日8時間労働の人が、今日は7時間で帰りたければ、振替で別の日に余分働くことをボスと相談できるようになっています。」

なぜ、日々の労働時間を増減できるのですか?

「仕事での目標値が数値化されており、年の初めに示されます。仕事でやるべき内容が明確なので、達成までの期間中は自分で時間をコントロールすることができるのです。」

上司にはどのように報告するのですか。「報告・連絡・相談(ホーレンソー)」はありますか?

「仕事の進捗は毎週上司に報告します。マネジャーは上司であるエリアマネジャーに報告します。エリアマネジャーは本部の上司に報告。組織が明確になっています。」

*ここでプリンス氏は組織図を書いて、報告の連絡網を説明してくれた。

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上司への報告は週ごとなのですか?

「そうです。週単位で報告するウィークリーマネジメントです。」

毎日上司に相談して仕事を進めることはあるのですか?

「毎日相談することはありません。基本的には自分で決めて仕事を進めていきます。」

休みは自分で決めるのですか?

「年単位で仕事が決まっているので、2週間ぐらいの休暇も可能です。オランダ全体でも出勤退勤も基本的に自分で自由に決めることができるようになっています。」

年単位の仕事内容は「職務遂行責任記述書」のような書面があるのですか?

「あります。オランダでは『デュールステリング』と言います。『ターゲット』です。」

勤務評価はどんな形態で行なわれるのですか?

「12月に評価面談があります。そこで1月からの目標値に達しているかを見られるのです。販売などは売上目標値などで明確化できます。他のマネジメント職、たとえば店舗運営などは別の目標値などが設定されます。いずれにしても仕事の目標は明確化されています。」

給与はどのような形で支払われるのですか?

「基本的には週単位での週給制です。」

*給与明細を見せてもらったが、正確な労働時間と報酬が印字されていた。

最後に聞きます。働く人に年齢・性別・学歴・国籍による差は生じますか?

「オランダでは基本的に男女性別や国籍による区別は全くありません。但し、特別な専門性が必要な学歴が必要な場合はあります。職種にもよりますが、男女や国籍によって差が生じることはありません。」

プリンス氏へのインタビューは以上である。

オランダでの働き方をまとめると以下のような特徴がある。

・ 年の初めに仕事の目標値が示される

・ 仕事の進捗は週ごとに上司に報告する

・ 組織図に従って連絡網も明確になっている

・ 自分の労働時間の増減を上司に相談して決める事が可能

・ 長期の休みも自分で設定できる

・ 日々の仕事を逐一上司に報告・連絡・相談することはない

・ 働く人に、労働時間や性別・国籍などで差が生じることはない

 

これらの特徴は、私が林俊範先生から15年前に教えてもらったピープルビジネスの仕組みそのものである。

林先生は日本の労働環境の悪さ、長時間労働と生産性の低い大きな理由が2つあると言われていた。

  • 「ホーレンソー(報告・連絡・相談)」があること
  • 自分で仕事のプランニング(計画)ができないこと

先進国の中でも生産性が高いオランダの働き方は逆である。自分で仕事のプランニングをして、日々のホーレンソーはなかった。

日本でも長時間労働を解消し、豊かな働き方を実現するのであれば、具体的な方法としてオランダの働き方に学び導入することが必要だと感じたインタビューであった。

 中園 徹