オランダと日本の働き方の違い④ LGBTという新たな人材活用

オランダでの雇用の実態を見て、日本とオランダの大きな差を感じたのがLGBTの活用であった。

恥ずかしながら、私はLGBTという言葉すら知らなかった。LGBTとは性的マイノリティ(少数者)のことで、L=レズビアン(女性同性愛者)、G=ゲイ(男性同性愛者)、B=バイセクシュアル(両性愛者)、T=トランスジェンダー(心と体の性の不一致)を指す。

今回のオランダ訪問で通訳をして下さった現地在住日本人の中村崇士さんはオランダのグローニンゲンでミヒル・ウィトカム(70)さんと同性結婚をされている性的マイノリティの方だった。

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「NHKオンラインLGBT特設サイト -虹色-」より

 

中村さんのオランダでの同性結婚式は、NHKで取材されテレビでも放映された。しかし、オランダでは特に珍しくない同性結婚を日本のテレビがわざわざ取材に来ていることが驚かれて、オランダの各新聞に「日本では大きなニュースになるゲイの結婚式」 と扱われた。

このようにオランダと日本では性的マイノリティに対する認識は大きく違う。中村さんに聞くと雇用現場においても同じことが言えるのだという。 中村さんは結婚前、日本にいた2008年にもNHKの番組に出演し自らがゲイであることをカミングアウトした。きっと周囲の人達も理解してくれるだろうと思った。しかし放映後は、同僚や友人たちから理解されることはなく職場を去ることになり、自分の居場所を見つけたのがオランダだったそうだ。

(参照:NHK福祉ポータル・ハートネット)

日本の職場では、性的マイノリティに対する理解や活躍の場は少なく、欧州に比べて大きく遅れている。もちろん職場でも、性的マイノリティにどのように接してよいのかわからない点もある。現場の戸惑いもあるだろう。しかし、オランダでは、性的マイノリティであっても一般的な男女とは何の違いもなく、普通に働くことができるという。別に普通のことだし、特別な接し方もしないのだそうだ。

では、性的マイノリティの雇用するメリットはあるのか。中村さんに率直に聞いてみた。すると、性的マイノリティには非常に優秀な人が多く、様々な分野で活躍する戦力になるというのだ。高い貢献度が期待できるという。

確かに性的マイノリティの人は、芸能や芸術の分野でも活躍している人も多い。感性やコミュニケーション能力も高いとのこと。さらに女性と男性の両方の気持ちを理解できる点もメリットであると言う。

実は私の職場にもトランスジェンダーのスタッフがいる。確かに彼(体は女性)は、仕事に対する取り組み姿勢も非常に真面目だし、他の女性スタッフからの信頼も厚く大切な戦力となりえている。

日本の多くの性的マイノリティの人たちは働く場を求めているそうだ。やる気のある人も多く、仕事を与えれば一生懸命頑張ってくれるだろうと中村さんは語った。ある意味、強力な戦力になることも期待できるかもしれない。

私も中村さんの熱い思いを聞いて、私も今後は性的マイノリティの人を積極的に雇用したいと思った。では、どうすれば性的マイノリティの人たちを雇用できるのだろうか。

中村さんは、まず虹色のレインボーフラッグを会社の求人採用ページにつければいいと教えてくれた。レインボーフラッグとはLGBTの尊厳と LGBTの社会運動を象徴する旗のことで、これを表記することが採用にもつながるという。欧米の有名企業でもレインボーフラッグを掲げているところも多い。

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日本におけるLGBT層に該当する人は全体の7.6%もいるという。人材不足で悩む日本の中小企業も、LGBTを新たな戦力として活用すれば、生産性も高いオランダの企業のような相乗効果も期待できるのではないだろうか。

 中園 徹