仕組み導入のために、全てのオペレーションを変革

株式会社りんどう漢方薬品 / 代表取締役  因幡 美子 様

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順調な繁盛店の経営者が抱えていた不安

私が起業するまで15年間勤務していた「堺整骨院」という整骨院グループのお話をさせて頂きたいと思います。「堺整骨院」は私が入社した平成11年11月当時は2店舗を運営し、従業員は20名。毎日患者さんで溢れかえり、とにかく繁盛している整骨院でした。それからぐんぐん右肩上がりで成長し続け、平成20年10月に私たちがピープルビジネススクールと出会う頃には、店舗は6店舗になり、従業員は100名を超える規模になっていました。順調に成長していましたが、社長の堺は様々な課題も抱えていました。例えば労働基準法の問題。高齢化社会に伴う医療費高騰における業界の先行き。開業支援だけでなく従業員が安定的に働ける環境作りの必要性。など、様々な問題や課題があったようです。そんな折に、ある信頼できる方に紹介していただいたのが、「ピープルビジネススクールセミナー」でした。社長の堺はこれまで、経営セミナーなど参加したこともなかったそうですが、中園先生や川村さんのお話に感銘を受け、「これだ!!」と直感で感じたようです。その場ですぐに、仕組み導入とコンサルティング導入を決め、先生方に依頼させて頂いたようです。3ヶ月後には「利益のピラミッド経営法」の社内セミナーを開催して頂き、その2ヶ月後には、ピープルビジネススクールによるコンサルをスタートさせたのです。このスピード感には私たちスタッフも正直驚かされましたが、とにかく社長が決断したことですから、私たちは不安ながらも従うしかないと思いました。そして仕組みの導入におけるプロジェクトリーダーは現場作業ができる女性が良いということで、いきなり私が指名されたのです。

仕組み導入のために、全てのオペレーションを変革

コンサルが始まり、最初に言われたのが、労働時間を週40時間にすることでした。当時の我が社は、徒弟制度の中、誰もが朝早くから夜遅くまで働いている。そんな会社でした。社長も同じように朝から晩まで仕事をしていました。 それをいきなり、1日8時間勤務、週休2日にすると言うのです。総労働時間は3分の2になってしまいます。

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社長に大丈夫なのか確認したほどですが、社長は「仕組み通りにやる」と動じませんでした。ところが驚くことに、これを実践すると、いきなり売上が1.6倍、経常利益が2倍になりました。スタッフがダラダラ遅くまで残っているということがなくなり、一人あたりの生産性である「人時生産性」が上がったためでした。
また、当時の堺整骨院は、治療の内容が統一されていないという問題もありました。術者にも得手不得手があって、みんな治療に使う手技が違うのです。当然、店舗ごとに質も違うという状態でした。そこへトレーニングシステムを構築すると、治療内容の統一が図られました。
また、それまではキャリアパスプラン(職能別階級制度)もなかったので、給与は社長がその都度決めていました。全従業員の名簿を見ながら、「こいつは最近頑張っている」「こいつは最近子供が生まれて親父になった」とか、「こいつはあのときクレームがあったな」など、直近の記憶を頼りに、社長が1年間の給与を決めていたのです。100人規模になるまでこのやり方を続けていましたので、社長は相当大変だったと思います。これも、キャリアパスプランの導入で改善されました。キャリアパスプランをつくるために、人時生産性を計算しました。従業員のひと月の総労働時間と粗利を出して、一時間あたりの粗利益高を求めた数字です。コンサルの初日に算出したところ、これが1933円でした。ちなみにこの数値が3,000円以下だったら商売を辞めたほうが良い。4,000円以下だったら多店舗展開する意味がない。目指すべきは6,000〜8,000円だと言われたことを覚えています。
そして、1ヶ月ごとのP/L(損益計算書)の導入です。社長でもそれまで、売上や経費などの数字を見るのは1年に1度だけ。期末のときに税理士から説明を受けるだけでした。細かい数字のことはよく分からなくても、とにかく患者様の数を増やせば何とかなると思っていたそうです。そこでP/Lを作成することになったのですが、そのためには給料日を変えなければならないという壁がありました。それまでは10日締めの15日払いだったのですが、P/Lをつくるためには月末締めにしなければならなかったのです。スタッフにとっても経理にとってもこれは大変なことでしたが、何とかそれも実現させました。

 

組織図もできました。それまでは組織図など全くありませんでしたから、あのまま社長がいなくなったらと思うととても恐ろしいです。
川村さんには、各院にて治療を実際に受けていただき、その上でQ.S.Cレベルのレポートをまとめてもらいました。そのときいただいた評価が、Q(クオリティ)がBレベル、S(サービス)がF(ファイヤー)レベル、C(クレンリネス)がCレベルでした。
本来なら、これがすべてBレベルにならないと、店舗の運営はできないそうです。特にサービスレベルが低い理由は、「待ち時間が長い」「人によって治療の時間が違う」「受付は良いが施術者がFレベル」ということでした。施術者の身だしなみが特に良くないとはっきり言われました。髪型に決まりはなく、ヒゲもOK、サンダルもOKでしたが、これが良くないなど考えたこともありませんでした。
オペレーションについても、今まで堺が何気なくやっていたことを細かく分析し、治療時間や身だしなみなど、ルールブックを作成しました。そうして一つひとつ改善していきました。そうしていくと「こんなにうまくいっているのに、なぜ変えなきゃいけないのか」というスタッフの反対意見が出てきます。スタッフだけではありません。税理士や会計士からも「コンサルは世の中にいくつもある。ハンバーガー屋の仕組みが整骨院にぴったり当てはまるのか疑問である。うまく活かせる所だけを採用してはどうか」と言われ、誰もこの仕組みの可能性を具体的に想像できる人はいませんでした。加えて人間は、今までのやり方を変えることに不安を覚えるものです。プロジェクトリーダーである私は、「みんなにきちんと説明し、理解してもらいながら進めたい」と社長に伝えました。けれども社長が求めていたのは、スピードでした。「説明したところで分かってもらえないのだから、一日も早く導入するしかないんだ」と言われました。
一日も早く導入するために私がやったことは、とにかくマニュアルを読むことでした。この仕組みは、若く入ったクルーが、自分が習ったことを人に教えることができるようになり、人に教えることで、コミュニケーションを学び、できないことができるようになり、嬉しさからさらにコミュニケーション力が上がって、技術も上がって成長する仕組みです。成長すると、トレーニングが進み、高質人財になっていきます。そうすれば、必ず売上が上がるのです。週40時間勤務を実現するには、この売上が必要でした。利益が上がると、ワーキングコンディション(労働環境)を整えることができますし、するとまた、スタッフがより育って高質人財になります。こうした良いサイクルが生まれるのです。マニュアルはそのためのツールであり、これをその通りに実行すればうまくいく。そう信じて、マニュアルを読み、セミナーでは中園先生や川村さんの言葉をすべてメモしていました。そしてTODOリストを作り、セミナーから帰る飛行機内で、いつまでに何をやるべきかを整理していました。
こうしてこちらのセミナーに通い、コンサルとマニュアルを最大限に活かして仕組みを導入することで、「社長のような商才がなくても、誰でもスーパーバイザーになれる」私はそう実感していました。

さらに仕組みを広めるために独立へ

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仕組みを導入して5年が経つと、堺整骨院の店舗は8店舗になりました。従業員は250名になりましたが、導入前は全従業員が正社員だったのに対し、60%がパート・アルバイトになっていました。そしてこの仕組みは真の意味で人を成長させてくれる、私たちに「本当の事」を教えてくれる仕組みだということがわかりました。

私自身は、この仕組みを5年間実践しながら新しい夢を持つようになっていました。それはこの仕組みを、伝えていくことを生涯の仕事にしたいということです。社長にその話をしたとき、「これはチャンスだから、独立しなさい。この仕組みを使って、この仕組みが活きる商売をしなさい」と言われました。起業欲はゼロだった私ですが、社長の言うことには意味があるのだと思い、思い切って独立することにしました。

独立にあたり、何のビジネスを始めるか。まずはそこから考えました。そこで思ったことは、女性を根本から元気にしたいということです。お母さんが精神的にも経済的にも自立していれば、その子どもたちも自立できます。これからの子どもたちを、生きる力のある子どもたちにできるのです。また、長年医療の現場にいて、みんなが西洋の薬漬けになっていることに疑問も感じていました。そこで、これまで私が培った整体と、ふくらはぎケア、骨盤のケアなどに漢方薬を織り交ぜた、女性向けの整体院が併設された漢方薬屋というビジネスフォーマットをつくりました。また、以前に不妊のお客さんに赤ちゃんができて喜ばれた経験が忘れられなかったので、妊活の女性をメインターゲットとしました。

起業2年目、光が射す経営を実践

現在、経営者として2年目になりました。開業から1年で、2店舗目をオープンし、現在はスタッフが33名、そのうちマネジャーが6名おります。誇らしいのは、年中無休ということです。お正月以外は、日曜日も祝日も営業しています。キャリアパスは最初からありますし、給料日も最初から月末締めで、勤務評価もあります。堺整骨院時代に苦労したみんなのお陰で、この仕組みありきで運営しているので、スタッフも「そういうものか」と納得してくれています。
起業時には、2店舗は運営できるように人を育てようと考えていたので、最初からスーパーバイザーになれるようなマネジャー候補を選んで雇いました。一人は、堺整骨院時代から私を支えてくれていたスタッフです。社長が一緒に独立させてくれました。あとの二人は、元飲食業の子を広島から、元通訳の子を韓国の釜山からスカウトして福岡に呼びました。
また、この2年間はオリジナルの商品を作り上げることにエネルギーを費やしました。利益を投じて、オリジナルの漢方薬と、サプリ、腹巻きなどの商品をつくりました。
今こうして思うことは、周りの経営者たちが、いかに指針なしに経営しているかということです。私にはそんな博打みたいな商売はできません。幸運なことに、私にはいつも光が見えている状態です。どうやったら成功するかが分かっているから、不安にならないのです。仕組みだけでは成功しません。仕組みと、世の中に売れる商品と、そしてそれを一緒に広げていく人財。この3つがあれば成功することが、私にはよく分かっています。中でも一番難しいのが仕組み作りですから、これに出会えたことは、何よりも幸せです。
この2年間、スタッフのみんなには、よく信じてついてきてくれたなと思います。彼女たちの素直さと能力に感謝しかありません。私一人では到底できなかった。だから人の縁って素晴らしいし、感謝してもし尽くせない思いです。そんな彼女たちが、「この会社に入社して良かった」と思える会社と商品をつくることが私の仕事だと思っています。