パート・アルバイトを戦力化する理由

わざわざパート・アルバイトを戦力化する必要があるのだろうか。日本では正社員での経営が主流だった。正社員の方が責任感も強く、長い時間での頑張りもきく。

一方のパート・アルバイトは責任感も薄く、帰る時間が来ればサッサと帰ってしまう。嫌なことがあればすぐに辞めてしまう。面倒極まりない。だから「まずフルタイムで働く正社員を雇うべきである。」と私は思っていた。

ところがそれが大きな間違いであることを林俊範先生から教えられた。特に中小企業は経営環境の変化に対応しなければ生き残ることはできない。必要なのが「変動費型ローコスト経営の実現」であると。

中小企業やスモールビジネスが、景気の良し悪しや環境変化にも対応するためには、高収益安定経営構造を確立することが必要となる。そのための方法が「労務費の変動費化=ローコスト経営構造」だと言う。

確かに労務費は一般的には固定費である。だから、せっかく繁忙期に稼いだ利益も、閑散期には吹っ飛んでしまう。年間を通しての売上の変動に応じて、労務費も変動が可能になれば、安定的に利益を確保できる。

では、労務費の変動費化を実現するためには何が必要なのだろうか。

それは1店舗(1現場)当たりにおいての適正な正社員数とパート・アルバイト数を実現すること。具体的には総労働時間数の割合が正社員20%以下・パート・アルバイト80%以上することが大切になる。これは実験・検証で導き出された経営原則とのこと。

本当に正社員の総労働時間を20%以下にできるのだろうか。そのためには、正社員とパート・アルバイトの業務内容を明確に区別することが重要となる。

・正社員 …… マネジメント(経営)業務

・パート・アルバイト ……… 簡単な作業から時間帯責任者までの業務

つまり、正社員が作業的なワーカーから脱却して、現場で作業をするパート・アルバイトをマネジメントすることができれば総労働時間の適正化が可能となる。

飲食業は別として、多くの中小企業が正社員比率は80%以上ではないだろうか。実際に私自身も正社員比率が8割以上で経営している期間が長かった。しかし、パート・アルバイト比率を上げることを意識すれば、毎年少しずつ上げることができた。パート・アルバイト比率が上がるに従って収益性が向上しただけでなく、社員が離職した際の影響も緩和できるようになった。

業種・業態は関係ない。フルタイムの正社員が主流の現場をパート・アルバイト化することはどんなビジネスでも実現できると林先生は断言された。あとは、信じることができるかどうかに掛かっている。

パート・アルバイトを戦力化する理由は唯ひとつ。

どんな時代になっても、企業が生き残るためである。

中園 徹